シャイー/コンセルトヘボウの個人的名盤

リッカルド・シャイー(Riccardo Chailly)とコンセルトヘボウは、ハイティンク時代の録音では今ひとつ分からなかったコンセルトヘボウの良さを分からせてくれた名コンビだと思っています。どの盤もそれぞれの曲の決定盤とは言いにくいものが多いのも正直な所ですが、シャイーにはシャイーの良さがあると思います。アバドに続くイタリア系指揮者として、今後も注目していきたい指揮者の一人です。

ハイティンク時代のコンセルトヘボウと違うのは、表現が明瞭で分かり易い事が第一にあります。シャイーの解釈はハイティンクほど洗練されてはいなくとも、特に弦楽のノリが段違いです。かと言ってオケに無理をさせることも無いので、ありのままのコンセルトヘボウらしい豊かで明るい音色が十分に楽しめると思います。

ちなみに、コンセルトヘボウの日本語版Wikipediaでは次のように酷い言われようをしています。百歩譲って[要出典]を付けたい。Wikipediaに平然とこんな事を書くのは日本人ぐらいですよ本当に。老害って本当にウザいと思います。

音楽評論家中野雄によるとハイティンクがシャイー時代のコンセルトヘボウについて「(メンゲルベルク、ベイヌム、ハイティンクと受け継がれた)コンセルトヘボウの伝統の音は失われた。もう戻らないだろう」と語ったという。

私は決してそうは思いません。ハイティンクのつまらない録音よりシャイー時代の方がずっと面白いと思います。


■ショスタコーヴィチのジャズ組曲

シャイーの録音の中で一番の名盤だと思うのがこれです。ショスタコーヴィチのジャズ組曲集です。ノリノリのコンセルトヘボウがこんな俗物の極みのような音楽を全力で奏でる様は、贅沢の極み中の極みです。気持ち悪くなるほど甘々でノリノリの演奏です。これを聴いたらもうシャイーでしか聴けなくなります。

↑は2011年のベルリンフィルとの野外ライブから、ジャズ組曲第2番のワルツ2。ベルリンフィルも聴衆もノリノリです。ワルツはやっぱりこうでなくちゃ。

↑はコンセルトヘボウとの録音から、同じくジャズ組曲第2番のワルツ2。トロンボーンを吹いていた高校生時代には、耳コピしてこれを良く吹いたものです。ショスタコーヴィチはやはり天才です。


■ブラームスの交響曲全集

シャイーのブラームスも、往年のコンセルトヘボウらしい生真面目な録音です。1番や2番はどうにも地味すぎる気もしますが、4番の雰囲気には実に良く合っていると思います。

これを書いている秋の季節には、やはりブラームスの4番が聴きたくなります。カラヤンのような派手な演奏もC.クライバーのような陽気な演奏も、この季節となるとイマイチしっくりきません。こういう時はザンデルリンク/SKDやこのシャイー/コンセルトヘボウのようば落ち着いたブラ4が聴きたくなります。


■ブルックナーの交響曲集

以前ブルックナーの8番について書いた時にもシャイーの録音を取り上げましたが、8番以外のも十分立派だと思います。4番、5番、7番、9番も素晴らしい録音です。コンセルトヘボウの主張し過ぎず明るい音色を伴ったブルックナーは、最も聴きやすいブルックナーの1つだと思います。残念だと思うポイントはベルリン放送響とのセッション録音が混じっている点のみです。


■フランクの交響曲

これも以前フランクの交響曲について書いた時に取り上げたものです。フランス人の書いた交響曲とは全く感じさせない、オルガン的で重厚感のあるフランクの録音です。


■マーラーの交響曲第8番

シャイーはコンセルトヘボウとマーラーの交響曲全集を残していますが、手持ちの中で一番良いと思うのはこの8番です。

オケがコンセルトヘボウだけあって基本的にクソ真面目ですが、シャイーのオケの鳴らせ方が巧みであるため決して退屈にならないのが良いポイントです。迫力こそ他盤に比べてしまうと物足りなさを感じますが、これほど整っていて”綺麗に”響かせるマーラーは中々ありません。

何年か前の年末には、シャイー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管によるマーラー8番のDVDを見ながら年を越したことがあります。シャイーの手にかかるとマーラーでさえ美しく聴こえてしまいます。これはこれで私にはアリです。

上乃木 燕二
クラシック音楽のブログを運営しています。後期ロマン派〜新ウィーン楽派がメイン。交響曲ネタが多目。オペラ・室内楽を扱うべく奮闘中。元トロンボーン奏者。チェロやりたい。マーラーとテンシュテットが心の師匠。